アフィリエイターは、心理的バリアを下げる仕事?
アフィリエイターの作っている価値を考える話のつづき。
商品の売買には、生産者が受け取る「生産者余剰」や、消費者が受け取る「消費者余剰」が発生します。
しかしそれ以外にも「サーチングコスト」や「マッチングコスト」が発生します。
生産者や販売者は、自分の手がけている商品を買ってくれるお客さんを探すコストが必要で、これを「サーチングコスト」と言います。
チラシを撒いたり、プレスリリースを出したり、CMを打ったりというのは、サーチングのためのコストですね。
一方、消費者の方も、自分に必要な商品を探す「サーチングコスト」が必要ですが、さらに「マッチングコスト」もかかります。
マッチングコストというのは、自分に合っているかどうかを調べるコストです。
高い買い物になればなるほど、それが自分に合っているのかどうか調べる必要に迫られます。
そのため、多くの人は、ネットなどで口コミ情報を探します。
口コミというのは、マッチングコストを下げる働きがあるみたいです。
- 「●●が言っているから、良い商品だ」
- 「ユーザーが言っているから、それなりに価値がある」
- 「ユーザー体験者がこういう経験をしているから、リスクを覚悟で購入できる」
こういうことが、つまり買い手側の心理的バリア(マッチングコスト)を下げて、購買行動に結びつくってことです。
商品やサービスを買いたい人というのは、その商品を買いたいんだけれど、躊躇している。
あるいは、どこで買うべきか、迷っている。
そこで何かもう一押し、確実性の高い情報が欲しいわけなんですね。
なので口コミサイトや価格比較サイトを探して、安心情報や安値のショップを見つけて買うわけです。
amazonのユーザーレビュー(★)や、楽天の感想なんかも、心理的バリアを下げるためにあります。
評価システムで、購買者が購買後に「失敗した」と思うリスクを下げているわけです。
価格比較サイトなんかも結局、
- 「高い買い物をすると嫌だな」
- 「他のところでもっと安く買えたら嫌だな」
という心理的バリアを下げる役割を果たしてるわけです。
だから何かをアフィリエイトする場合、「これは良いですよ」「絶対良いですよ」と、ほめてばかりいても、ダメでしょうね。
実際に最安値でなくても、調べたウチの最安値で、買いたい人にとって十分安ければ、それで良い訳なんです。
ネットで情報を探している人は、そう言う情報を求めているわけではなく、良い情報も悪い情報も揃っているところの方がいいわけです。
人は、自分で納得して、モノを買いたい。
いい話だけじゃなく、悪いうわさも聞いた上で、自分で判断したい。
その上で、悪い買い物をしたのなら、仕方がないとあきらめもつく。
だからそのための情報を、うまく整理して提供する。
これがアフィリエイターが提供できる経済価値であり、その対価としてアフィリ報酬をもらう。
こういう理解をしてみましたが、どうでしょうか?
公開日:2009-05-10
解説
20世紀の経済学は、パレトー最適と言って、それぞれの個人や組織が、自己便益を最大化するように振る舞うと考えられていました。
そのため、積極的に活動して、自身の便益を最大化するように行動する(リスクオン)という前提を置いていたわけです。
ところがそれでは経済現象が上手く説明できないとして、21世紀に入る頃には、ナッシュ均衡という概念で説明されるようになりました。
ナッシュ均衡というのは、ミクロ経済学のゲーム理論の概念で、プレイヤーがそれぞれ、自分の損を最小限に抑えようと行動する
(リスク回避的/リスクオフ)という前提での均衡状態です。
人々がリスク回避的に動くとしたら、アフィリエイターの仕事は、見込み客の不安を取り除き、購買サイトに送り出す、というのも説明できますね。
ただ、その対価が、売価の1%とか2%では、全く割には合いませんから、しっかり説明して送り出すなら、マージンが少なくとも5%以上ないと、難しいでしょうね。